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超高速・光コム光学

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超短パルスレーザーが拓く新しい世界

超短パルスの多次元性・多重性・ダイナミックレンジを利用した多様な応用を研究しています。

図1 フェムト秒光計測
図1 超高速・超精密光学

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光コム: 時間・空間・周波数の精密なものさし

超短パルスレーザー(モード同期レーザー)のスペクトル(色) を細かく分解して見ると、等間隔に並ぶ多数の光周波数モード列が現れます。 これが櫛状に見えることから、光コム(コムは櫛のこと。光周波数コムとも言う) と呼ばれます。

光コムは、時間・空間・周波数の精密なものさしとして利用できます。 ひとつのものさしの中に異なるサイズの目盛があるように、 光コムも異なるレンジの基準を持っています。例えば、周波数軸なら、 光周波数(サブPHz)、スペクトル広がり(THz)、コム間隔(GHz)、 オフセット周波数(MHz以下など)です。これらは、相互に精密な関係を持っており、 広範囲の精密な基準として用いることにより、超高精度計測や制御を実現できます。

図2 光コム
図2 光コム

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光コム計測

上記のような光コムの特長を活かして、 以下のような精密計測技術の研究を行っています。

光コムを用いた絶対距離測定技術「コム距離計」

図3 光コム
図3 コム距離計(長距離用プロトタイプ)
  • 光コムのモード間ビートの位相測定を利用したオリジナル原理
  • 高分解能、高精度、周期誤差フリー
    • 2μm/240 m (空気揺らぎ限界)
    • 200 nm (短距離、空気揺らぎの影響なし)
  • 長距離用プロトタイプの開発
    • 比例係数 <0.2 ppm (評価系限界)
    • 屋外測定 280 m、光ファイバ伝送259 m
  • 産業計測用プロトタイプ開発
    • 干渉測長器の置き換え、組み込み用分離型装置
    • 2μm/10 m の絶対測長

ピコメートル変位計測

  • 広帯域・高精度波長走査干渉計
  • 大気中で超高安定測定を実現
    • <1 pm (1 min.), <100 pm (1 day)

パルス間干渉計

  • コムの周波数測定による干渉測定(高精度、無走査)
  • 周波数制御による光路長制御
  • 高精度長光路測定、空気屈折率の測定

コヒーレントリンク技術

  • 距離計(絶対距離測定)と干渉計(変位測定)のリンク
  • 超高ダイナミックレンジの絶対測長への道(pm〜km。宇宙応用へ)

コム光源、計測技術の高度化

  • 「光周波数シンセサイザ」:周波数標準に同期した任意光周波数発生光源の開発
  • コムのモードフィルタリング(間隔拡大、高SN化、モード間ヘテロダイン)
  • 2色法による空気屈折率変動を自動補正した測長技術の開発
  • 「波長コム」:空気屈折率変動に追随した任意波長の安定化光源の開発

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超高速光計測

超短パルスの特長を活かして、 以下のような計測技術の研究を行っています。

光が作る3次元色分け地図

図4 チャープ光を用いた3次元計測の原理
図4 チャープ光を用いた3次元計測の原理
図5 光が作る色分け地図
図5 光が作る色分け地図

図4に示すように、フェムト秒光パルスをチャープさせると、 短い時間幅のパルスの中で中心波長が規則的に変化する「時間の虹」 を作ることができます。このチャープしたフェムト秒光パルスを測定対象に照射すると、 測定対象までの距離に対応した時間遅れでパルスが反射されてきます。 この反射パルス光の一部を超高速シャッターで切り出して、 カラーCCDカメラなどで撮影すると、測定対象までの距離に対応して、 特定の色がついた画像が得られます(図5)。 つまり、測定対象の形状という空間情報は、 フェムト秒光パルスが伝播する時間情報に変換され、さらに色情報に変換されています。

この方法を使うと、逆に、検出器でとらえられない超高速に変化する現象を色情報(スペクトル)に変換して測定することができます。実際に、この方法で多種の超高速シャッターの特性をスペクトル波形として瞬時に観測し、より高速なシャッターを探索する研究に用いました。つまり、フェムト秒超高速の時間・空間・色情報変換の原理となっており、これらの任意の組み合わせを活用すると多彩な瞬時測定が可能となります。

  • チャープ光パルスを利用したオリジナル原理
  • 超高速に時間・空間・周波数(色)情報を変換して、任意の情報を取得
  • 形状、超高速現象の瞬時計測に利用可能
  • スーパーコンティニュウム光で、直接カラー地図の実現
  • 超高速&高効率光シャッターの開発(光増幅イメージングカーシャッター)

選択的計測

図6 レンズの厚さと形状の同時計測
図6 レンズの厚さと形状の同時計測

複数界面からの反射光をパルスにより時間分割することにより、 複雑な光学系のサイズを測定する手法を開発しました。この方法を用いて、 コーナーキューブの光学中心の位置や、 界面からの反射率が0.3%と微弱な混合液体の界面位置を測定する技術を開発しました。

また、図6に示すように、基本波と第2高調波の分散を用いた2色干渉法をパルスで行い、 レンズの形状と厚さの同一配置での測定に応用しました。

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参考

  1. 美濃島 薫, 超短パルス光を用いた3次元形状計測, 応用物理, Vol.67, No.6, pp.668-672, 1998
  2. 美濃島 薫, フェムト秒技術の光計測への応用, O plus E, Vol.201, No.9, pp.010159-010165,1999
  3. 美濃島 薫, フェムト秒レーザーで作る「光の櫛」で距離を計測, AIST Today, Vo.3, No.4, p.19, 2003
  4. 美濃島 薫, フェムト秒光パルスの時間・周波数関係を利用した空間精密計測, 電子情報通信学会誌, Vol.86, No.8, pp.632-636, 2003
  5. 美濃島 薫, 松本 弘一, フェムト秒光コムを用いた高精度距離計測技術, OPTRONICS, Vol.24, No.8, pp.103-108, 2005
  6. 美濃島 薫, 高品位フェムト秒光コムと光周波数シンセサイザ, OPTRONICS, Vol.24, No.10, pp.100-107, 2005
  7. 美濃島 薫, 松本 弘一, フェムト秒光コムを用いた高精度距離計測技術, 精密工学会誌, Vol.72, No.8, pp.959-962, 2006
  8. 美濃島 薫, 洪 鋒雷, 稲場 肇, 大苗 敦, 光コム・シンセサイザー, 応用物理, Vol.76, No.2, pp. 169-173, 2007
  9. 美濃島 薫, トーマス・シブリ, 稲場 肇, 尾藤 洋一, 洪 鋒雷, 大苗 敦, 松本 弘一, 光コムを用いた時間・周波数標準に基づく精密長さ計測, レーザー研究, Vol.35, No.10, pp.642-648, 2007
  10. 美濃島 薫, 精密長さ計測のための光コムによる干渉計測, 光学, Vol.37, No.10, pp.576-582, 2008
  11. 美濃島 薫, モード同期ファイバレーザーの光コムによる精密長さ測定, O plus E, Vol.31, No.9, pp.1041-1046, 2009

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